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人生の道も、実際の道も、進むことの楽しさを知ってしまったから、止まってなんていられない。(平野温子さんvol.2)

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今回インタビューさせていただいたのは平野温子さん

大手総合建設会社に勤務する傍らスポーツを通じて東北被災地のスポーツマンを応援するRunforTOHOKUJAPNを2011年に設立。同活動で2012年ロンドン五輪に参加するなど国内外で活躍するパラレルキャリアの実践者。『会社にいるな、社会にいろ』を働くモットーに掲げる彼女は、社会的課題の解決に貢献する人物でありたいと語る。趣味は、旅行・カメラ・読書・キャンドル作りと公言してきたが、最近、ロードバイクに夢中だという。
RunforTOHOKUJAPNとはスポーツを通じて東北被災地のスポーツマンを支援する団体です。https://m.facebook.com/RunforTOHOKUJAPAN?refsrc=https%3A%2F%2Fwww.facebook.com%2FRunforTOHOKUJAPAN&__mref=message

 

 

前回はロードバイクを始めた経緯、仲間との出会い、そこから生まれた将来の夢、などを伺いました。Vol.2ではさらに平野さんが感じている、スポーツの魅力を掘り下げていきます。

_震災後に急に火が着いたんですか?

震災は、人生を変える大きな出来事でしたね。私の実家は福島市です。福島県のことだけで言えば放射能問題があって、それは両親の日常生活にも影響を及ぼしていますし、間接的には私にも影響を及ぼしていると言えます。

 

atsuko

_たとえば、どんな影響があるのか、伺ってもいいですか?

ほんの一例ですけど、実家の庭に柿の木があるんですね。私は、果物の中で柿が一番好きなんです。時期になれば、庭の柿をもいで渋抜きをし、娘に食べさせるのが父親の楽しみでした。しかし2011年以降、実家から送られる柿の小包には、放射能検査を実施し、基準値以下であることを確認したメモが添えられるようになりました。そのメモを見る度に、娘の好物を送ってあげたいという両親の純粋な気持ちと、一方で放射能検査をしなければばらない現実に違和感を覚えます。震災後4年が経過しても、これが、両親と私の日常の一部なんです。

_なるほど。

震災当日に福島にいたという理由で、相手のご両親が結婚に難色を示し、結果として結婚に至らなかったという地元の友人もいます。そういう話を聞くと、福島の声にならない声をそのままにしていいのかな?と悶々と考えるようになりました。社会に対する違和感を自分のFacebookに数回、正直に書いた時があったんですけど、フォロワーがFacebook上でサーッと引いていくのがわかるんですよ。普段は「いいね!」が200とか付くのに、そういう投稿をすると「いいね!」が15ぐらい。これでは逆効果ですよね。被災地は、被災以前のような「日常」を取り戻すために、復興という挑戦を続けています。その過程の中では、被災地特有の苦悩があると思います。しかし、それは日常に余りにも溶け込み過ぎていて、全国規模で考えたら、小さな問題なのかもしれません。ですが、震災は、あまりに大きな社会的課題を沢山残していきました。2011年3月11日というあの日、あの時を共に生きた日本人として、この社会的課題を被災地だけの問題とすることは、私にはできません。それに、皆で考えて、皆で力を合わせれば、もっと早く、もっといいアイディアで課題が解決できるかもしれませんよね。皆が思わず協力したくなるもの、それでいて一体感が生まれるものは何だろうと考えた時に、スポーツイベントが閃いたんです。ほら、マラソンだと沿道やエイドステーションで地元の人が応援するじゃないですか。選手と地元の人の交流が生まれる瞬間ですよね。交流があると、その場所はもう他人事の土地じゃなくなる気がしませんか?仲間がいる場所に変わりますよね。東北被災地や福島でも、そういう心的意味合いでの交流が生まれれば、仮設住宅の問題や放射能問題、沿岸部の復興の問題等々、震災後の様々な社会的課題におのずと興味を持ってくれるんじゃないかと思い立ちました。これって、スポーツが持つ一体感や連帯感の波及効果だと思うんですよね。

_RunforTOHOKUJAPNの活動もそうですが、ご自身がスポーツマンでなかったのに、スポーツの魅力や、One for all.All for one.の精神を自分の言葉として、ホントに心底信じているのはどんなところからきているんですか?

ホントですね。考えた時なかったな。今ふと思ったんですけど、話はスポーツから離れちゃうんですけど、私の祖父母は、戦争経験者です。一人の祖父は南京にいて、もう一人の祖父は、海軍に所属して日本海を護っていたそうです。当たり前ですが、祖父がその時死んでいたら、今、私は生きていません。祖父が一生懸命に繋いでくれた命が、私に続いているんですよね。そこに想いを馳せた時、人は想いのバトンを繋げることで、何かを成し遂げてゆくのかもしれないなって思ったんです。一人の人間が何かを成し遂げるには、人生はあまりに短く、その力は弱いものですが、時代を超え伝播する想いは、100年、200年と時を越して行くんだろうなぁと。では、時を超える想いは何かと言われれば、幸せになって欲しい、笑顔で生きて欲しいという他人を想う気持ちだと思うんです。誰かを想う気持ちって、スポーツの『One for all.All for one.』に通じると感じています。仲間を想い、仲間を信じ、仲間のために今できる最大のプレーを行うことって、まさしく、人生そのものだと。私達の次に続く社会は、今よりもっと温かくて優しいものであって欲しいなぁ、と私は願っています。スポーツの力を信じ切れるくらいのめり込めるのは、「想いを次に繋げる」という私の中の人生論とスポーツのチーム感や連帯感がリンクしたからなんだと思います。

atsuko

_仰られるスポーツのチーム感や連帯感はどんな時に感じるんですか?例えば箱根駅伝のドラマチックなシーンがあったりしますよね。そんな時に感じていたんですか?

はい。スポーツで一線を張る選手たちには「信じる力」の強さを感じます。どんな状況下でも自分自身とチームメンバーを信じ、勝利を呼び寄せることができると信じ、プレーをしますよね。そこにはもはや敵の存在もいないように感じます。敵は弱い自分そのものであるかのように、自分たちのプレーに集中する姿には、例え小学生の選手であっても、プロ選手でも、揺るぎない信念を感じます。そういう姿は本当にかっこいいですよね。

atsuko
写真はRunforTOHOKUJAPNで2012年ロンドンオリンピックに行った時の写真

やりたいと思うことに五感を研ぎ澄ます。「好き」の感度を上げる。

_ロードバイクを始めてから、心境に変化などはありますか?

ロードバイクを始めて一番の変化したことは、まだ見ぬ物事に対して、恐怖心よりも興味が先行するようになったことだと思います。あの坂の先には何があるだろう?と思ってペダリングすると、絶景があったりします。どんな急勾配であっても、ペダリングを止めなければ、必ずどこかに辿りつきます。脚を止めるか、止めないか、そのジャッジメントは常に自分にある。それをもって「自由」と言うのであれば、自転車乗りはいつも自由だ!そんなことさえ言えちゃうくらい、ロードバイクは素敵なスポーツです。

 _自由であることを教えてくれた?

はい。 可能性はいつだって自分にあるということも教えてくれました。できるかどうかじゃない、やるかやらないか。これは、人生でも大切なことですよね。やりたいと思うことに五感を研ぎ澄ます。「好き」の感度を上げる。ワクワクする方にハンドルを切る。危なくなったらブレーキを掛ける。単純すぎる行為ですが、人生を生きる上で、示唆に富む行為だと感じています。スポーツプランナーの夢は、まだ、未知数です。できるかどうかも分からない。でもね、やりたいんです。だから、ハンドルをそっちに切るしかない。結果、坂道が続いたとしても、その判断に後悔はないんだと思う。そこにはまた、新しい道が交差していて、自分をどこかに運んでくれるだって思えるようになりました。毎日、ドキドキワクワクしています。それにきっと、辛い坂道を登っている時は、応援し、並走し、風除けになってくれるサイクリストが現れる気がします。もうね、出会っちゃったっていう感じ!次は、どこに漕ぎだそうかな?ってことしか考えていません。人生の道も、実際の道も、進むことの楽しさを知ってしまったから、止まってなんていられないんです。

 _自分を信じられるようになる、ってすごいことですよね。

自分が自分にときめく、そんな感覚。

_自分が自分にときめく!!!

RunforTOHOKUJAPNを立ち上げた時も、周囲から独立したらとか、フリーになりなよ、とかお声がけいただいて、考えた時期もあったんですよ。それでも行動に移せなかったのは、自分なんて、とか、私にはきっとできないとか、どこかでこう、自分を信じることが出来なかったからだと思うんですよね。でも、いまは出来るか出来ないかなんて関係ないっていう境地にきました。自分がこんなにワクワクしているんだから、失敗したってきっとワクワクと感じてしまうような失敗だよって。お米一粒しか食べられない生活になっても、なんかキャハハ幸せ、みたいなイメージしかない。

atsuko

_それがロードバイクのおかげ?

おかげ、だと思います。ロードバイクで走れないのに、ロードバイク購入したその日に、横浜から自宅まで行けると思います、って言ってやっちゃうとか。なんかこう、きっとできると思うって、言うことを行動に移させてくれるのはいつもロードバイクで、どんなに転んでも何しても私の中古のロードバイクはついてきてくれるし、壊れないし、それに、ロードバイクは私に仲間まで連れて来てくれるし!自分自身が自分にときめくっていうことを、自分に許してあげられるようになったのは大きな変化だと思いますね。

_自信がつくものであったんですね。

なんかワクワクが止まらない。

_それはすごい幸せなことですね。このインタビューサイトのコンセプトでもありますが、体を動かすことで、一歩踏み出す勇気を、って思っているんですよね。体を動かすと自己肯定感もつくし、気持ちがいいし、スポーツマン魂みたいなものを経験したことがない人も、こんな世界があるんだって経験することができる。それって、すごく楽しいと思うんですよね。新しく仲間も出来たり。ただ、誰もがランニングが面白いわけではないし、誰もがロードバイクなわけでもないんですよね。山登りでもいいし、ノルディックウォーキングでもいいし、自分の合うものに出会えるといいな、って思います。平野さんはこうしてロードバイクという、ときめくものに出会えて、本当に幸せですね!

ある意味奇跡ですよね。そういったものに出会えるって。

_ロードバイクを始めた時に出会った方々もとても親切で、温かくて、それもよかったですよね。

人に恵まれたんだなって思います。まだサイクリストで嫌な人に出会ったことがないです。きっとサイクリストはいい人達ばかりなんだろうなって。

_幸せですね。

ホント幸せです。ロードバイクって自分の動力で進むしかない特異なスポーツなんですよ。だからハマったのかもしれません。進むか進まないかは、自分が脚を踏み出すか踏み出さないか、これ次第です。すごくシンプルだけど、すごく自分に問いかけるものがある。ここで諦めるのか、どうする?っていうのを常にロードバイクに問いかけられている感じ。踏み出すか、踏み出さないかは全てあなた次第、みたいなところが好きですね。まさしく人生そのもの。「やるっしょっ!」てグッと力を入れた時に、パって横に仲間が来てくれる。風が吹いたら前に出て、風除けになってくれる。それぞれの道で、それぞれに出来ることを率先して行う仲間に、ありがと〜って自分のペダリングで応える。そんな心の通じあいが楽しくてたまらない。人生もこうであって欲しいなって。

 

atsuko

_素敵ですね!これから何かを始めてみたいなって思う人に、何かアドバイスが有るとしたらどんなことがありますか?

とりあえずやってみる。

_とりあえずやる。

やるんですけど、そんなすぐにロードバイクは買えないだろうし、やり方もわからないから、そういうときはTwitterとかFacebookにつぶやくんですよ「やりたい!」って。そしたらきっと誰かが声をかけてくれるから、それに乗っかってみる。

_乗っかってみる。

思っているだけじゃ、変わらないから、とりあえず発信する。やってみて、無理だったら無理!ごめん!っ言って、潔くやめる。ぞっこんラブになったらやり続ける。

_いいですね!その方法ね。

私はホントにそのやり方だったので。Facebookに書いて。今はInstagramってあるじゃないですか。私はInstagramでは、ロードバイクのことしかアップしてないんですよ。そうすると世界中のサイクリストから、フォローされたりして、世界中と繋がるんですよね。そして、スポーツを通じて新しい世界、新しい感情に出会わせてもらえることが、スポーツのよいところだと感じます。実際はイメージする自分自身よりも「できない自分」と対峙しなければならない、その対峙を挫折と捉えるか挑戦のチャンスと意味付けるかは、全て自分次第。いつだって挑戦にあふれていることを教えてくれます。スポーツをやりたいと思っているだけで、少しだけ「行動」が変わります。行動が変わると出会う人が変わります。人は環境で生きる動物なので、人的環境が変わると、自分自身が変わります。だから「好き」という感度を高めることが大切ですよね。「好き」「興味ある」という衝動に素直に生きる人生の一歩を、スポーツを通じて行ってみると、人生、大きく好転しているかもしれませんね!

 

_そうですね。始めてみたら、同じように初心者の人もいるかもしれないしね。

だからまずはやれるかどうかじゃなくて、繋がることを一つ先にやってみたら意外とスポーツをやるっていう門戸はすぐ近くにあるのかもしれません。そんな気がします。

 

_ありがとうございました。どうやって始めたのか覚えていない。それでもハマってしまったロードバイク。ロードバイクに乗りながら、ロードバイクを走らせることと、人生や生き方と重ね合わせて語ってくださったのがとても印象的でした。「自分が自分にときめく!」そんな人生を多くの人が感じられたら素敵だろうなと思いました。体を動かすことは、その感覚に近づきやすくなる一つの方法なのではないか? とあらためて平野さんのお話を伺っていて思いました。今度一緒にロードバイクで旅にでたいな、と思います。平野さんありがとうございました。

 

 

この記事の著者

森村ゆき
森村ゆき
RunforSmile株式会社代表取締役。2004年に初挑戦したホノルルマラソンで、改めて体を動かす素晴らしさを体感し「より多くの人に体を動かす素晴らしさを味わってほしい!」と“スポーツ”と“コミュニティ”をキーワードに、さまざまな活動をスタート。
2005年、ホノルルマラソン完走をきっかけに友人たちと立ち上げた『PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~』は、楽しみながら走ることで世界の子どもたちをサポートする仕組みをうみ、現在までの寄付額は約7000万円にのぼる。現在は、「体を動かすこと」でその人の健康を見直すきっかけを作り、「いつまでも健康で豊かな人生を送る人を増やしたい!」と、体に関するセミナーや大会の企画運営、講演、スポーツボランティアのマネジメントなどを行っている。
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