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諦めた“夢”に決着ができ、誰かを喜ばせる“今の仕事”に誇りを持てるように。(花里和光さんVol.2)

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今回インタビューさせていただいたのは花里和光さん
1969年生まれ。高校卒業と同時に漫画家を目指し、北海道から上京。漫画家は志半ばで高所恐怖症にも関わらず、高層建築物用タワークレーンオペレーターに。一日中座りっぱなしの仕事と不摂生のため、徐々に健康を害し始め、健康診断で血中脂肪過多の診断を受ける。このことをキッカケに、学生時代は大嫌いだったランニングを仕方なく始める。始めてみると学生時代には感じなかった気持ち良さと爽快感をランニングに見いだし、それからランニングの魅力にどんどんはまり、様々な大会に参加、いつの間にかラン仲間も増え、ますます走る事が楽しくなってしまう。今年は とうとう東京から大阪までを己の脚のみで走るクレイジーな大会にまでエントリーしてしまうこととなる。

 諦めた“夢”に決着ができ、誰かを喜ばせる“今の仕事”に誇りを持てるように。

_素晴らしいですね。走り始めていた頃は漫画を描いていらっしゃったんですか?
いや、その頃は描いていません。タワークレーンオペレーターをやっていました。

hanazato

_じゃあ、漫画の方は趣味で?
漫画は、、、。走り始めた頃には出すべきアイデアもなかったんですが、考える癖がずっとあって。もういまは、漫画家は諦めているんですけれど、映画つくりたいな、とか、いつか脚本家になりたいな、とかはあるんですよね。

_何かを創り出すのが好きなんですね。
やりたいですね。なんかこう、感動をインプットするじゃないですか、映画とかで。インプットするとアウトプットしたくなりません? その循環が欲しいなって。まぁ、最近はフェイスブックなんかでもアウトプットになるのかもしれないですけれど……。

_現在は大会とかもよく出てらっしゃるようですが、これは何かステップアップというか、ご自身で家の周りを走っていたのが変化したタイミングがあったのでしょうか?
そうですね、休日にも走るようになったっていうのが一番ですかね。休日は時間があるじゃないですか。最初は距離を伸ばしてみたくなったんですよね。その頃は走ってもせいぜい5キロくらいだったんですよね。その先の世界を見てみたくなって、それで5キロ毎距離を増やしていったんです。

_大会に初めて出たのは、いつ、どんな経緯だったんですか?
8月に走り始めて、翌年の1月ですね。

_5か月後!
5ヶ月後に16キロ。湘南藤沢の大会でした。ちょうど仕事仲間が出るっていうんで、一緒に出たんですが、辛かったです。

_辛かった。
また違いますよね、自分で走るのと。とばしちゃうんですよね、やっぱり興奮して。で、ボロボロですよね。たかだか16キロでも折り返してからが辛いですよ。今まで1キロ4分台なんかで走った事がなかったのに1キロ4分47秒とかでとばしてしまったので。もうボロボロですよ。歩かないで戻ってくるのがやっと。その大会に出て、それまで、仲間っていえば、職場の人くらいしかいなかったんですけど、走る仲間ができました。たまたま知り合いの知り合いが走る仲間を紹介してくれて。その人がフルマラソンに一緒に出ようよって誘ってくれたんですよね。まだ走り始めて5ヶ月だからちょっと無理かなって思ったけれど、一緒に走る人がいるなら僕もやります!って手を挙げて、3月にフルマラソンにでました。

_キッチンタイマーからの急展開ですね。
3月のサンスポ古河はなももマラソンです。第1回大会でした。

_どうでしたか?初マラソンは。結構練習したんですか?
大会の2週間位前に皇居を8周してみたんです。

_8周?!ってことは約40キロですね!結構、練習しましたね。
はい。走るからにはサブフォーだ!と思って。(サブフォー=フルマラソンを4時間を下回るタイムで完走すること)

_凄いですね!結構レベル高い所を狙っていきましたね、いきなり。
全然だめでした。皇居も全然速く走れなくて。走り終わって皇居の周回から横断歩道を渡って道路に出るじゃないですか。40キロ走った後、信号が青の間に渡り切れなかったです。

_渡りきれない? 疲れちゃって?
渡りきれなかったんですよ……(笑)。

_皇居8周はかなりがんばりましたね。ひとりで走ったんですか?
ひとりでやりました。

_すごいですね。
スイッチ入っちゃうとやっちゃうタイプなので。

_突き詰めるタイプなんですね。
そういうところありますね。そういうところ、まだオタクなんです。

_それでは「古河なももマラソン」も無事に走り。
タイムは4時間9分でした。

_初マラソンでそれは速いじゃないですか!
まぁ、サブフォーは無理だと思ってましたけど、4時間9分で走れたから、いけるかも!ってうれしくなって、ますますはまっちゃいました。それからはフルマラソンに誘ってくれた人とかを中心にランニング友達ができて。その人達とは、今もメインの仲間として付き合っています。

_それは職場とは別の仲間ですか?
別ですね。

_新しい仲間が出来たんですね。年齢を重ねると新しい友達がなかなかできないとも聞きますよね?
僕もそう思っていたんです。ジムに何年通っても、友達はひとりもできなかったのに、走るようになったらアホみたいに増えていくんですよね。何なんですかね?

hanazato

_みんなで走って、そのあと打ち上げでビール飲んだり、楽しいですよね。
そうですよね。走るって、フルマラソンもそうですけれど、自分のリミッター解除するくらいがんばるじゃないですか。限界の一歩先。速い人も遅い人も、人それぞれに。その感じを抜けると解放感っていうか、すごい気持ちがいいんですよ。

_日常ではそういう感覚、なかなか味わえないですからね。
走ると本当に気持ちが良くて。ベータエンドルフィンじゃないけれど、絶対出てるって思うんですよ。

_花里さんは、ご自身の感覚にとても鋭いんですね。ストレス解消のために走ったりもしますか?
そうですね。嫌な事があったら走るみたいな。自分の好きに走っているから気持ちいいんであって、記録を求めだすと、それが無くなっていっちゃうんですよね。

_さっきおっしゃっていたように「やらされる」感じになっちゃうんですか?
タイムを追いかけすぎると、それも自分の意志でもあるんですけど、気持ちよさがなくなっていく感じがあって、でも悔しいからがんばりたい気持ちもあって、そのせめぎあい。

_基本はご自身のペースで気持ち良く、が大事なんですね。
そうですね。で、ゆっくり走るのが好きなんで。そうすると段々とウルトラマラソンの方にいっちゃう。(ウルトラマラソン=42.195キロを超える距離を走るロードレースの総称)走るのは楽しいんです。

_長く走ると楽しみが長くなる、そういう感覚ですか?
そうですね、本当に。走っていて気持ちがいい瞬間って、1日中走っていたい!っていう心境になります。まぁ実際は1日中なんて走れないんですけれどね。でも、その瞬間はそう思うんです。

_どこまでも走り続けていける、みたいな?
実際はほんの数十秒なんですけれど。そういう気持ちよさがあって、どこまででも行ってみようかなっていう。

_その気持ちにたどり着く前に体の苦しさを感じますよね、普通は。気持ちが楽しくなるとか、体が楽に走れるっていうのがあると思うんですけど、その感覚をつかむのは難しいのではないでしょうか。それをつかむコツとかあるのでしょうか?
最初は、走っている時は苦しいだけ。せいぜい走り終わって家でシャワー浴びている時に「あ~、運動して良かった~、気持ちいい~」みたいな。それがまず、第一段階であって、そのうち、走っている最中までもが気持ちいいっていう段階があるんです。

_気持ちがいいは、具体的にどういう感覚なんですか?
一言でいうと、「楽」ですね。自分の本体がおでこのあたりにあるとして、体は乗り物と例えるなら、体は乗り物だから車と一緒で疲れを知らないわけですよ。疲れはとは無縁なんですよ。自分はただ体という乗り物に乗っているだけで、ふんぞり返ってくつろいでいるっている感じ。ロボットに乗っている感覚になる。

hanazato

_おぉーすごい感覚ですね。
だからマラソンで辛い時も、辛いのは勘違い、と思うようにしているんです。

_ランニングを始めてなにか変化しましたか?
生活にハリが出ましたね。

_生活にハリが出たというと?
運動もなんもしてない時は、月曜から金曜が長くて仕方なくて、仕事行くのも、ああ嫌だなっていうときもあって。でも大会にエントリーするようになってみると、目標ができるせいか、ハリがでてきました。

_ランニングはどのくらいの頻度でいつ走っているんですか?朝とか夜とか?
今は建設業界なんで、仕事が月曜から土曜まであって、休みは日曜のみです。平日は朝4時に目覚ましをかけて、4時45分の始発に乗って現場に行きます。で、現場に着くのが5時半。仕事は7時からで30分前にはクレーンに乗ってないといけないので、正味30分が自由時間。その間に走っています。現場の近くに24時間やっているジムがあるので走るか筋トレをするかを自由時間にやっています。

hanasato2

_その自由時間をつくるために始発に乗っているんですか?
はい。朝走るのが気持ちいいってことが分かって。

_先日フェイスブックに日の出の写真をあげていましたよね。
今の趣味が朝の太陽を見ることなんです。

_朝走る場合、早起きして、自宅周辺で走ってから出勤するのが普通だと思うのですが、出勤してから職場周辺を走るんですね。
それだとダラダラしちゃって走らないんです。まだあと5分、あと5分って。だからまず始発に乗るって決めて、ジムとか入っちゃうと、スイッチ入るじゃないですか。で、走って日の出見て、っていう感じです。

_建設現場だと定期的に場所が変わりますよね?
はい。今の現場は、いい感じで走れているんですけれど、次はどういうプランで走ろうかなか、その都度考えています。

_場所が変わるのも楽しいですか?
はい。今は横浜なんですが、最高ですよ。海の近くなので、水平線から太陽が出るんで、すごくきれいです。

_基本は朝ですか? 
夜も走りますけれど、家族サービス優先っていうか、家族との交流も大切なんで。大会は月に1回までにしてって言われています。大会は月に1回だけ大会なんですけれど、日曜に練習会とかあるじゃないですか。それも家族にとっては同じなんですよね。日曜に家を空けるのは。「月1回なのに!」って怒られてる感じです。

_でも家族もビックリしているんじゃないですか? 痩せたり、生活ががらっと変わっちゃって。健康的になったからうれしいと思うんですけれど。
まぁ、パチンコとか、ギャンブルやるよりはいいんじゃないですかね?

_走っていてよかったなって思った事はありますか?
いっぱいありすぎて。精神的なこともありますし、友達が出来たこともありますし、いい事しかないです。悪いことと言えば家族から疎まれるっていう事くらいで。

_お仕事面については、何か変化はありましたか? 走るようになってから仕事へのモチベーションが変わったとか。
今はタワークレーンの運転をやっていますが、もともとは漫画家になりたかった。けれど、子供ができて、漫画家じゃ食えないからって諦めたんですね。まだ芽も出ていなかったし。それで、親父がやっていた仕事を継ぐような形で今の仕事を始めました。その親父も3年前に亡くなって、今はもうこの仕事は強制されている訳でもないのに続けています。この仕事を始めた当初は、自分の中で漫画家を諦めて煮え切らないものを感じていたのですが、そのことがどうでもよくなったというか。

_そんなことどうでもいいやって。
そうですね。だいたいどうでも良くなるんです、走ると。いい意味で。

_先ほどから「漫画家を諦めた」っていう発言が何回かあったので、後悔があったんですね。
そうですね。でも、もうどうでも良くなった。漫画家を諦めたこととがどうでもよくなったのは、走ることとは、一見全然つながっていないんですけれど、自分の中ではつながっているんですよね。冷静に考えると、走ることとか、マラソン大会にお金出して走ることとか、ものすごく非効率なことじゃないですか。無駄というか、賢くないことなんですよ。頭で考えると。よっぽどその時間をパートでもしてお金もうけしたほうが、お金持ちになれるのに、とか。でもそこには情熱がいかなくて、自己ベストに情熱を傾けるって、理屈じゃありえない。でも走りたい気持ちが勝ってしまう。それも脳みそじゃない、体が走りたがっている。頭で考えると漫画家を諦めてしまったとか、今の仕事は本来の俺じゃないとかあるんですけれど、それも、どうでもいい。何て言うんですかね、こうして話すとつながってないんですけど、つながっているんですよね。

_生きている感覚っていうんですか?大げさですけれど。走ったり動いたりすること自体が人間として生きているっていうことを味わっていると思うんですよね。手と足が動いて、心臓がばくばくして。ただ座っているだけとは違って。そうすると漫画家になろうが、今の仕事をしようが「自分」っていう大事な軸見えてきたんではないかな。なんて思うのですが。
若い頃ってやりたい職業を夢として追いかけるじゃないですか。僕にとってそれは漫画家だったんです。でも年を重ねてわかったことは、職業って自分のやりたいことだけどやるものではないということ。誰かを喜ばせるためにやるのがその職業のプロで、だから自分がやりたい事じゃなくても、誰かを喜ばせたり、やりがいを持てる職業があるとわかったんです。以前はやりたい職業じゃないことは嫌だと思っている自分がいて。でも今の仕事も誰かのためにはなっていると思えたら、どんな職業でもいいんだって思えるようになりました。もともと仕事ってそういうもんだったら、どんな職業も全部一緒じゃんって思うようになったのかな。

_究極の感覚に行きついた感じですね。今も漫画は描いたりするんですか?
いえ、描かないですね。僕、よく考えたら絵を描くのも好きじゃないってことに気づいたんです。得意ではありますが、好きかと言われると、そうでもないなって。わかったことは、自分がアウトプットしたもので人を感動させたいっていう思い。だから別に映画でもいいし、何でもいいんですよ、本当は。その手段として漫画だったんですけれど。だから、今は後悔はないんです。

_後悔はない。何かを乗り越えたんですね。
そうだ、「自分にOKをだせるようになった」そう思います。どこかで、漫画家を諦めたことがひっかかっていたんだと思います。それが走るようになってそれでもOKと思えるようになりました。

_すごい変化ですね。楽になったんじゃないですか?
そうですね。いい意味でどうでもよくなりました。

_最後にこれからランニングを始めてみたいっていうからに、続けるポイントとかアドバイスがあればおねがいします。
まず、スマホってランニングのアプリあるじゃないですか。あれはとにかく1回使った方がいいです。

_キッチンタイマーじゃなくてね。
走った距離を累積もしてくれるので、ちょっとずつ数字が増えていくと楽しいし、音楽も聞きながら走れるしそう、音楽って大事だなって思いますね、一人の時間に没頭できる。あとはSNSですかね。一緒に走る仲間と常につながれるじゃないですか。今日は走ったとか。それが励みになるし、そういう感じで仲間ができてやっていけばもう1回ハマったら抜けられないですよ。

_言われてみればランナーで、ひとりで孤独に走っている人ってあまりいないですね。いつの間にか仲間ができちゃう、つながっちゃう。
つながっちゃうんですよね。そこもまたいいところですよね。そのうちズルズル引き込まれちゃうみたいな。

_とてもいい話が聞けました。健康診断の結果から、健康づくりのために始めたランニングによってこんなにも楽しみが増えた花里さん。仕事観まで変わったお話はとても印象的でした。ありがとうございます。

 

 

この記事の著者

森村ゆき
森村ゆき
RunforSmile株式会社代表取締役。2004年に初挑戦したホノルルマラソンで、改めて体を動かす素晴らしさを体感し「より多くの人に体を動かす素晴らしさを味わってほしい!」と“スポーツ”と“コミュニティ”をキーワードに、さまざまな活動をスタート。
2005年、ホノルルマラソン完走をきっかけに友人たちと立ち上げた『PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~』は、楽しみながら走ることで世界の子どもたちをサポートする仕組みをうみ、現在までの寄付額は約7000万円にのぼる。現在は、「体を動かすこと」でその人の健康を見直すきっかけを作り、「いつまでも健康で豊かな人生を送る人を増やしたい!」と、体に関するセミナーや大会の企画運営、講演、スポーツボランティアのマネジメントなどを行っている。
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